この山行は、北アルプス「裏銀座縦走」編のつづきです。
北アルプス1日目(北アルプス 松本→西穂山荘)
2008年10月3日、晴れ。
リベンジの日がやってきた。
台風も直撃はなく、太平洋を通過。
前線も抜けて、まずまず良好。
この日は、松本からバスに乗り、新穂高温泉からロープウェーを使って西穂山荘を目指す。
西穂山荘に到着後、ウロウロしている時に上高地から4時間ほどで来られる登山道があることに気付く…。
無駄なことをした…。
でも、結構な数の人がロープウェーを利用しており、今の主流なのかもしれない。
北アルプス2日目(西穂山荘→西穂高岳→ジャンダルム→奥穂高岳)
10月4日、3時起床。
まだ寝静まる山荘を抜け出し、朝食を食べる。
う、うまい(笑)
腹が減っては戦は出来ぬとは良く言ったもんだ。
真っ暗な中を西穂独標までの緩やかな稜線を歩き始める。
星が瞬き、冷たい空気が静かに流れる。
うっすらと夜が白んできた。
西穂独標(2,701m)を手前に空が明るくなり始めた。
夜の黒から濃い青へ、そこへ太陽の暖色系が混じり込む。
一旦青は影を潜めて、夜明けに向かう。
遠くには富士山の頂きが拝め、今日の絶好の天気に深く感謝した。
天気は完璧だ。あとは自分たちの問題だな。
そう想いながら、何処までも美しい世界にただただ心を奪われた。
独標に着いた頃には、もう完全に朝を迎えていた。
眼下には梓川が上高地に流れ込んでいる。
西穂山荘と上高地が近いはずだ(苦笑)
ここまでは難なく来られた。
ガイド本なんかには、ここまでで難儀したら戻るように書いてあった。
この景色を拝めるなら、この独標まで登るのも十分面白い。
行ける人はもちろん先に進むべきだ。
だって、もっといっぱい見られるモンね(笑)
いよいよ陽が差し始めた。
陰影が美しい。
うっすらと眼下に残る雲がまた良いエッセンスを加えている。
身近な景色は優しいのに、進路に目を移すと険悪である(笑)
さぁ、いよいよなんだなぁ。
不安と期待に胸を膨らませ、準備をし、やっとここまで辿り着いたという感がする。
例えるなら、空手の試合前の感じにもう少しワクワク感を加えた感じに似ているなぁ(笑)
道が大分ガレてきて、いよいよ自分のイメージと重なりだした。
振り返れば、独標とピラミッドピークがツンツンと空を突き出ている。
うっすらと雲がかかっている焼岳も美しい!
うんうん、こんな感じ♪
おっと、言い忘れましたが気分は既に最高潮ですよん♪
でも、まだまだ想像していたスリルに出くわしておりません。
今回は岩稜帯から形成される景色と、そこを歩くスリルを楽しみに来たのですから。
私はどちらかというと人の居ない所を訪れる傾向が強いのですが、今回はまた違ったベクトルの楽しみを求めて来ました。
西穂高岳( 2,908m)を通過すると、さぁ~て、いよいよ始まりました♪
くくく、こうじゃないとね♪
屋久島では味わえない岩場ルートを楽しみに来たのですから、こうでなくては。
楽しんでいますが、決してなめているわけではないですよ。
メットを被り、ハーネス付けて、ザックにはザイルを入れてあります。
先に言ってしまいますが、無くても平気でした(笑)
ただ、それはうちらの最後の結果論であって、実際を知らない自分たちは用意するべきと思って用意しました。
メットくらいは最低限用意するべきだと思いますね。
あと、クライミングジムで体の使い方を練習したり、岩場を確保してもらって歩く練習をしたりね。
ここはクライミングではないですが、その練習が役に立つのでお薦めです。
当日苦しむより、楽しい方が良いでしょ?(笑)
間ノ岳前後は集中する箇所が多く、紹介している写真の間には岩場だらけのアップダウンがたっぷりあります♪
若干麻痺してくるので、写真には収めていませんが良い緊張感があって堪らないっす!!
遠くから見ると、「えっ、マジ!?あれ超えるの??」ってなるピークもまぁ越えてしまえば、「う~ん、気を付けていれば大丈夫だね」と変わります。
写真をよ~く見ると、写真中央の草付きの右に太郎ちゃんが歩いています(笑)
そこから上にルートのペンキマークがみえるでしょ?
うちらはこれを超えて下ってきている所です。
天狗岳山頂でおやきを食べながら休憩していると、誰か来ました!!
奥穂高側から登山者が一人来ました。
西穂と奥穂の間を通過していた人は、トータルでも10名ほどだったかな。
噂によると、ここを大人数のツアーが通過していくとか!?
私が見ても、そういう事をする場所ではないですし、他人を巻き込むので止めた方がいいですな。
ツアーで行くなら専属がいいですよ。
じゃないと、無駄に時間がかかって疲れるし、地形的にも目が行き届くとは思えません。
何より、こんな素晴らしい岩稜帯にうじゃうじゃ人が居たら、ちょっとテンション下がるではないですか(笑)
それにしても、あのコブ尾根(右斜めに上がるやつ)。
な、長くないっすか…。
天狗岳から天狗のコル(山頂と山頂を結ぶ稜線上で最も標高が低くなっている場所)まで下り、長い長いコブ尾根を登ります。
振り返れば天狗岳から天狗のコルまでの不安定な下りが見てとれると思います。
このルートの中でもかなり足場の悪い場所なので、太郎ちゃんとお互いに落石には最大の注意を払って進みました。
正直、信頼できるパートナー以外に頭上にいて欲しくない場所です(笑)
さぁ、これを超えればいよいよ待望のジャンダルムだ!
岩のお肌は快晴で乾燥気味♪
ラッキー。
雨の心配も無く、風もほとんど無い。
岩稜歩きには最適です。
蒼い空と、折り重なる岩礫。
無機質ですが、ありとあらゆる要素を削り落としたその姿には鋭利な美しさが宿っています。
今回求めていたものを全身で感じている、そんな感じがしました。
そんなこんなで登りを楽しんでいたら、ジャンダルムが目の前に…。
「これがジャンダルム??」ってな位普通に見えます(笑)
西穂側から来るとジャンダルムは大して迫力があるようには見えません。
奥穂側からみるとそれはそれは大迫力です。
最後の方のページに出てきますのでお楽しみに♪
結構憧れの対象として登場するジャンダルム。
山頂にはこんな愉快な標識が。
誰が置いたか知らないが、個人的には大のお気に入り。
たまに見る、山岳会の登頂記念プレートなんかより100倍気が利いている(笑)
でも、何故この標識になったのだろう…。
誰か知りませんか??
一度は台風によって断念させられたジャンダルム。
登れたこともそうですか、こうやって天候に恵まれて楽しく来ることが出来たのが何よりも嬉しかった。
すっかりうかれているアホな二人をご覧下さい。
でも、メッチャ楽しそうでしょ?(笑)
いやぁ、楽しくて楽しくてしょうがなかったもんね(笑)
まぁこんな写真を載せるのもたまにはアリでしょう。
そんなわけで、奥穂高岳をバックに相棒・太郎ちゃん(左)と♪
ジャンダルムで恒例のおやきをまた一つ食べて、先に進む。
(ここで、おやき講座を。冷凍のおやきを買っておいて、入山。それをお腹が空いた時に食べていくと良いですよぉ~。北アルプスを歩くときのお薦め:笑)
おっと、振り返れば立派なジャンダルムの勇姿が!!これっすよ、コレ!かっこいいなぁ。
切れ込んだ谷から上がってきた訳ではないので、あくまでもその姿がスゴイだけです。
もしここまで辿り着けば、ここ自体は誰でも登れるんじゃないかな。
直登ルートも正直簡単そうだった。
でも、やっぱりかっこいいなぁ~。
崖の所に岩屋みたいのがあって、あんな所にテント張って誰かいたら更にかっこいいなぁなんて話していた。
この姿を奥穂高岳から見てしまったら、やっぱり憧れるわ(笑)
通称「ロバの耳」を下降中の太郎ちゃん♪
真剣です(笑)
名前はかわいいけど、決して微笑ましい場所ではありません(笑)
ジャンダルムは有名だけど、登るのは全く簡単。
一方、ロバの耳は丁寧に上り下りしないと危ないですね。
特に下りは。
それにしても、人間って本当に小さいですよねぇ。
こんな所で落ちたら、まず助からないし。
人間以外の動物にも、こういうちょっと危険を楽しむ的なものはあるのでしょうか?
私はあると思うのですが、そういう場面に出くわして無いもんで…。
昔、谷に橋のように倒れた倒木の上に積雪してて、そこに鹿の足跡があった。
思えば、あいつも同じ類の仲間かなぁ(笑)
高度感溢れるロバの耳をコチョコチョした後は…。
まぁ、また岩場です(笑)
しかし、生き物の気配が薄いところですなぁ。
屋久島の生命がむせかえるように息づいている場所とは対局に近い感じがする。
夏場だと岩の隙間にもう少し高山植物が見られるのだろうか?
でも、生き物の感じは少なかったが、大地の気配はビシビシと伝わってきた!!
やはり、こういう雰囲気を五感で感じられる幸せってすごいです。
本当に贅沢で、恵まれた時間の中に身を置いているとつくづく思いました。
いつも思うのだが、達成感だけで山に登るってのはつくづくもったいない!
こんなに色んな事を感じさせて、考えさせてくれる場所ってそう無いと思うんですよね。
うん♪
さぁ、いよいよ通称「馬の背」。
「馬の背」と言うよりは、「竜の背」って感じですよ、ココ。
正直、一番怖かったです(笑)
ここを風が出てから通過するのは怖いですね。
強風時は、ここは確保して通過してもいいかもね。
ナイフリッジなので、完全に落ちればザイル切れるかも。
あくまでも、ちょっとした確保しか実質できないだろうなぁ。
でも、「あの感覚」は堪りません♪くくく。
思い出しただけでもまた行きたくなります♪
当たり前ですが、高所恐怖症の方にはこのルートはおすすめできませんね。
どんなに魅力的に思っても、我慢で何とか…という感じではなかったです。
そうでなくても、怖いかもなぁ。
馬の背のたてがみを掻き分けて通過したら、あとは目の前に大きく見えるようになった奥穂高岳(3,190m)まで(この頃には普通の:笑)岩場を越えていくだけだ。
4:30にスタートして、この時点で14時ちょい前。
堪能しながら来て約10時間か。
緊張、いや集中というべきか。
とにかく集中力が必要です。
ノーミスで通過する意気込みが必要です。
疲れ果ててしまうと、当然集中力が無くなってしまうので、危険度はグンと高くなります。
北アルプスの中でも遭難・死亡事故が多い場所なので、行く際は「そこまで心配いらないんじゃないの?」という位まで準備した方が良いですよ。
他の方を見ていたら、相当疲れて帰ってきてたので…。
みんな「同じ想い」を持ち、あそこを同じ日に通過した仲間です。
喜びは同じです(笑)
この日はみんな無事に通れたみたいで良かった♪
奥穂高岳山頂まで行くと、人がまばらにいます。
混雑を避け、山頂手前で本日6個目となるおやきを食べる(笑)
山頂で、無事な登山が出来たことを感謝・お礼した。
明日は、今日これから行く穂高岳山荘からここまで登り返して、前穂高岳に登って重太郎新道経由で上高地まで下りようと思う。
通常は眼下に見える(写真)涸沢まで下って上高地を目指すようだ。
やや日陰になって分かりにくいが、涸沢のまわりは本当に紅葉が綺麗だった。
眼下に涸沢ヒュッテという山小屋が見えるが、その周りに色とりどりのテントがあるのが見えるだろうか?
とてつもない数である。
さすが、紅葉で有名な場所だけはある。
うちらも、前穂高岳に行かなければ涸沢で泊まっても良かった。
でも、前穂に行きたかった(笑)
この北アルプスの旅は、この本の古いバージョンを元に計画しました。情報は新しい方が良いので、こちらをお勧めしています!
北アルプス3日目(穂高岳山荘→前穂高岳→重太郎新道→上高地)
昨晩は、気持ち良く寝…と行きたい所だが、また山小屋で残念なことがあり(もはや書きません)、もう小屋には泊まりたくないなぁと思った。
次回からはテント泊を基本にして、泊まるとしても小さな山小屋に泊まろう。
良い出会いもあるのだが、せっかく気持ち良く過ごしている時に明らかに他人の理不尽に巻き込まれるのは正直ゴメンです。
大きな山荘クラスの山小屋では、西穂高山荘が好印象だったなぁ。
そんな事もあったが、素晴らしい縦走を出来た事で幸せな眠りにはつきましたよ♪
翌日、暗い内から早々に山小屋を出て奥穂高岳へと向かった。
前穂高岳の手前で朝を迎えた。
前穂高岳に行って、あとは下るだけかぁ。
一抹の寂しさがこみ上げてきた。
前穂高岳で、バリエーションルートで上がって来ている人がいて楽しそうだった。
明神岳の方から上がってきたらしい。
自分の好みからすると、バリエーションルートを是非いつか行ってみたい!
う~ん、羨ましい♪
急な重太郎新道を下りていくとダケカンバを主体とする樹林帯に入り込む。
あとは、グングン下っていくだけだ。
もう上高地が近づいてきた。
振り返れば、昨日通ったギザギザの稜線が遠くに見える。
昨日はあそこを通っていたんだぁ。
楽しかったなぁ♪本当に楽しかった。
この下りでも若干テンションは下がったものの(笑)、ちょっと寂しさが勝ったかな。
今回、太郎ちゃんと一緒に山の中ではトータル一週間かぁ。
楽しかったなぁ。
天気にも結果的に恵まれた方だと思う。
おかげで大満足だ!
次回は立山や剣岳の方にも行きたいなぁ。
太郎ちゃん、また一緒に行きますか!!(笑)
こういう映像↓見たら絶対に行きたくなりますw
技術的に少し難しいと思う人も、この映像はかなり北アルプス登山を味わえます!