9日間の旅もいよいよ折り返し。
トラブル続きで始まった旅も、今は時間が静かに、そして大きく流れている。
これがアラスカの大地を流れる時間なのだろうか…。
Arrigetch Creekを目指し、熟したブルーベリーをむさぼるように食べ、ポーキュパインとの出逢いに恵まれる1日がはじまる
5日目の朝
これからはいくつかの尾根越えはあるものの、下りがメイン。気持ちも大分楽だ。
ルンルン歩いていると、「うぉぉぉっ!!」ついにあった~。
実はこれブルーベリーなのです。
ちょこちょことあったのですが、なかなかたくさんなっている所がなかったのです。
でも、ここはこんなにたわわに実っているではないですか。
夢中になって手のひらに集め、それを一気に頬張る!
「うんめぇ~!!」
ブルーベリーの甘さとちょっとした酸味が口に広がります。
いやぁ、これでまた夢がひとつ叶いました。
中には、熟しすぎてワインみたいな味になっているものもありました(笑)
そう言えば、春になって残っているベリー類を鳥が食べると酔っぱらうっていう話を星野道夫さんの本で読んだことがある。
さぞかし可愛らしい光景だろう!
朝のフルーツタイムを終了し、再び歩き始めることに。
手は紫にそまり、座った時にカッパのおしりは染みだらけ。
う~ん、落ちるのかなぁコレ・・・。
(写真を見てルートを想像してみてください)
今日は、今乗っている尾根を左に下りていって川まで下り、平地を見つけてまずテントを張ります。
その後は、時間次第でブラブラしようかなぁというのがプラン。
ちなみに、最終日は目前にある大きな川をずっと下流に下っていきます。
もうそんな日のことが頭をかすめるような日程になってきたことが、ちょっぴり寂しかった。
さっきの尾根から急な坂をジグザグと下りてくると、支流に出会った。
雄大だがある意味荒涼とした雰囲気を漂わせるこの地で、川を目の前にすると心が和んだ。
日本に生まれ育った自分にとっては、「水」というものは自分の奥深い所で密接に繋がっているのだろう。
川にある大きめの石に腰掛け、しばし流れを目で追っていた。
写真に没頭したり、お菓子をモグモグと食べたり、天を仰いだり・・・。
全てが水の音のもとに行われた。
すると、「ああっっっっっっ!ポーキュパインだ!」
最大級の興奮にもかかわらず、じっとその声を抑える。
妻にも教えて、二人大興奮。
向こうは、完全にこちらに気付いていないのだ。
川の水で音はかき消されている。
少しだけ私達の匂いがポーキュパイン(ヤマアラシの仲間)に届くのか、立ち止まって二本足で立ち上がり、鼻をくんくんさせて周囲の様子をうかがっている。
でも、なにも特定出来なかったらしく、またノソノソと歩き出した。
また、こういう時に限って手元にあるのはチョコレートだけ。
何てこった…。いくら何でも、カメラを取りに行ったら気付かれてしまう。
しかも景色の写真を撮っていたので、三脚上のカメラには広角レンズがまたもや付いているではないか…。
「え~い!」と速攻でカメラのセットを始めるが、早足になった彼を写真に納めるのは私の腕では難しかった。
この写真は補正に補正を加えて、なんとか彼の姿をみんなに見せられるようにしたものである。
のそのそっ。
走るわけでもなく、ただ足早にブッシュに逃げ込もうとするポーキュパイン。
やっと何とかまともに撮れたのは、彼のかわいらしい「おしり」だけだった(笑)
でも、良いではないか。こんなに素晴らしい出逢いがあったのだから。
ちなみに、Porcupineの体は3万本近いとげで覆われているので、急ぐ必要はないし、また急げなくもある。
とげは、敵にしっぽをぶつけると体中のトゲが付いている筋肉から緩んではずれやすくなり、それを相手に差し込むのだ。
更にその刺さったトゲは、相手の体温によって温まり、トゲの先がブレード状に膨らんで抜けなくなるという念の入れ方!
かわいい動物だが、なかなかエグイ攻撃をする。
そうそう、こんな体で木登りも上手なのだ。
まったく愛くるしいやつだ。
さぁいよいよArrigetch Creekと呼ばれる本流地帯が見えてきた。
川沿いにはタイガのように針葉樹が林立している。
さてさて、良いテント場は見つかるかなぁ。
岩ゴロゴロだった足下にふかふかの苔が再び戻ってきた。
山の方は完全なガレ場ばかりだったが、下の方に来るとツンドラ地帯になってくるのだ。
とりあえずは、川を目指して行くとするか。
川横に通りやすくなった道のようなものがあった。
獣道+人道といった感じか。
川沿いは確かに歩きやすいので、きっと通り道が重なるのだろう。
偶然のような必然のような・・・。
しかし、平らな割にはいいテント場が無い。
テント場の善し悪しは、かなり快適度を左右するのでなるべく良い場所を選びたい。
奥を望めばアリゲッチ針峰が見えるし、明後日には今度ここから下流に向けて戻らなくてはいけないので、あまり上流にテントを張りたくない。
うろうろして何とか妥協できる場所を見つけた。
そこは、春には川の一部となる場所みたいで、平らではあったが理想的では無かった。
でも、この時期に増水することは周りをみても天気の流れを考慮してもなさそうだ。
水の音が大きすぎるのが弱点だが、まぁしょうがない。
食事を済ませ陽が沈もうとする頃、針峰群からいくつかの山が顔を覗かせてきた。
その姿は逆光に照らされて、シルエットだけを浮かび上がらせていた。
限りなくモノトーンに近づいたその光景は、一日の終わりを告げるとともに、明日への期待を膨らませてくれた。
いよいよ明日は、アリゲッチ針峰の最深部に接近だ。
[button-yellow url="https://pockets.jp/blog/2019/07/05/alaska-arrigetch-peaks-day6/" target="_self" position="center"]アリゲッチ針峰の最深部へと進んでいく[/button-yellow]