気付いたら「ソコ」に居たヤクザル
西部林道を歩いていた。
お昼ご飯を食べ、先程渡った川を渡ろうとした時に何か気配を感じた。
見廻しても分からない…
タイトルからしてヤクザルが居ることは分かった上で、写真の中でどこにヤクザルが居るか分かりますか?
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写真のダイブ下の方です。
花崗岩の白っぽい三角形の岩の横です。
ずっとこの姿勢です。
数十分に一度の割合でしか動きません。
最初は、こちらの気配を悟られないようにしていたのですが、私たちの存在には気付いていたと思います。
でも、こちらに目線を向けることはただの一度もありませんでした。
11月頭としては信じられないくらいに暑い日で、川の上を通り抜ける風だけがソヨソヨとこのヤクザルさんを撫でているようでした。
ただただずっとこの姿勢です。
本当に奇跡的に顔が痒かったのかそんな素振りを見せた瞬間がありました。
このヤクザルさん、腰から脇にかけて右側の毛が大分抜け落ちてしまっていました。
この姿勢、あまり楽な姿勢には見えないのですが、それでも安定はしているようでした。
あまりストレスになってはいけないので、ソッとソッと回り込みながら写真を撮らせてもらいました。
私はきっとこの日がこのヤクザルの最後の日になると思いました。
ずっと最後まで見ていたかったのですが、既に1時間近くこの場でこの子を見守っていました。
ツアー中だったので、そろそろ行かなくてはいけません。
その場をそろそろ立ち去ろうとした時、一匹の白いネコが通りすぎました。
極稀に西部林道で見かけることがあります。
以前も、死んでまだ間も無い腹のあたりだけが食べられていたヤクシカの死骸をジッと見つめているのを見かけたことがあります。
ひょっとしたら…などと思いながらも、後ろ髪を引かれながら別れの時となりました。
最期に時間を共有できたことを不思議に、そしてどこか有り難くも感じながらこのヤクザルさんの居る場所を後にしました。
その後、どうなったのか気になって気になって仕方がありません。
翌日、朝一番でまたこの場所を訪れてみました。
夜は放射冷却で結構冷えこんだので、正直亡骸がソコにあると思っていました。
ですが…
そこには空間があるだけでした。
死んでからカラスやネコに連れ去られたのかとも思いましたが、争った気配もなくただその場からヤクザルという存在が消えてしまったようでした。
まだ生き抜こうと必死になっていたのか、ただその日に死ななかったという事実があるだけなのか…
全ては分からないままです。
あの身体、あの生気で何処に行ったのだろうか…。
可能だったらずっとその場に居たかったな…。
でも、素敵な時間を共有させてもらいました。
この数日前にも、道路上にポツンと取り残された1羽のエゾビタキと出逢い、拾い上げて最期の時を一緒に過ごさせてもらったばかり。
今はそんな巡り合わせのタイミングなのかもしれません…。
この子は今も私の庭で眠っています☺️
(注釈)ヤクザルの正式名称は「ヤクシマザル」なのですが、私は愛情を込めて「ヤクザル」と呼ばせてもらっています😊