屋久島環境文化財団が残した自然保護の系譜
屋久島で守られてきた自然。
守られてきたと言っても、そもそも屋久島の『超再生能力』が無ければここまでの自然が現在まで残ることは無かったと思う。
その大前提に立った上でも、屋久島の希有な自然を残そうと世界自然遺産登録の道を歩ききったその功績にはとても頭が下がった。
そして、その自然とその自然と共に住む島民たちを一緒に「自然保護」としてきた経緯がよくみて取れる本だった。
観光目的で語られることも少なく無い世界自然遺産登録だが、その本来の意味をもう一度思い出させてくれる点でも優れていると感じた。
また、その登録までの道のりを牽引してきた「知の巨人たち」がどのような想いでその道を歩いてきたがよく分かる内容にもなっている。
そして、多くの第一人者たちをそうまで駆り立てた屋久島の自然って本当にすごいなぁと改めて思わされた。
この本は、どんな人にお勧めできるんだろう…と考えてみた。
- 屋久島に来たことがある人で、且つ屋久島の自然や人に『魅了』された人
- 自然保護に興味がある人
- 世界遺産登録を目指す地域行政関係の人
- そして、一番は『島民』
屋久島で生まれ育った人、屋久島に移住してきた人たちには全員読んで欲しいと思った。
自分たちが生まれ育った場所を、客観的に捉えることはとても難しい。
これは屋久島に限ったことではなく、問題の当事者よりも周りにいる人間の方が客観的にみた上での解決方法などを提示してくれることが多いことに似ているかもしれない。
屋久島で生きて行く上で、行動や決断の指針になるような本だと思う。
そこに答えがあるわけではない。
その人が、その人らしく考えていく上で、大前提としてこの部分は理解してその考えが生まれているかどうかがすごく大事だと思う。
皆がこういう根底になる考えを共有しておけば、今後の屋久島はもっと違う形で進化を遂げられるように思う。
無意味に変わらないこと、または変われないことは、単に適応できないのと同義だと思うので…。
適応できなければ滅びるだけである。
屋久島の自然と一緒に人も変化と進化を遂げていきたいならば、人間の変化が求められているような気がした。