2005年8月27日
夏の屋久島を抜け出し、一路アラスカへと向かう。
成田からシアトル空港に行き、そこで11時間のウェイティング!
格安航空券だからしょうがないが、コレは相当堪えた。
そして、やっとの思いでアラスカ航空に飛び乗りフェアバンクスに向かった。
到着一番思ったことは・・・。これって相当寒くない??
どうやら3週間ほど冬が前倒しになって訪れているらしい。
だとすると、北極圏内にある目的地は一体...。
夏の屋久島から、北極圏にある国立公園【Gates of the Arctic National Park and Preserve】へ
真っ暗なフェアバンクス空港に降り立ち、タクシーで安いモーテルに泊まった。
近くに大きなショッピングセンターがあって、ここで9日間のトレッキングに必要な食料を揃えられそうだ。
明日にでも買いに行こう。そう思ってベッドに潜り込み、起きてみれば午後の1時近く!
さすがにこれにはビックリした。今回は、珍しく時差ボケになったのだ。
急いで買い物へ。ステーキを始め、腸詰めのソーセージ、野菜に果物、パンに行動食、更にはビールとワイン。
これ、持ちきれるのかなぁ…という位買い込んだ。
重いのはつらいが、おいしい食べ物を食べられないのはつまらない。
何とか無理が利く日数だ。
2005年8月28日
いよいよここフェアバンクスから更に北にあるBettles(ベテルス)という街に向かう。
せいぜい10人位しか乗れないプロペラ機に乗り、いよいよ出発だ。機長の話では、もう雪が降っているらしい・・・。
紅葉は見られるのだろうか?まぁ、こればかりは仕方がない。
それより、ついに夢にまで見たあのBettlesに行けるのだ!
ついに飛行機が飛び立った。眼下に広がるのはツンドラ地帯だ。
「広大」・・・。
きっとこういう場所に使う言葉なんだろう。所々でヤナギの仲間が黄葉している。
こんな広大な土地を旅する動物やそれを追う人間達・・・。
とてつもないスケールで生きている生き物がいるのかと思うと、感心すると同時にそのスケールを捉えられていない自分に気付かされる。
やっと到着したベテルスは、紅葉に包まれていた。
本当はこの日に Circle Lakeと呼ばれる湖まで乗り継いで行く予定だったが、現地の天候が悪く今日は飛べないらしい。
今日は、待機小屋で寝て良いらしく無料で貸してくれた。
出発できないのはすごく残念だが、散歩に出てみることにした。
かつて、ゴールドラッシュで栄えたことがあるというこの村も今では人口60人程。
かつての面影は全く無かった。静かで、冷たい空気が張りつめている。
本当に寒いが、空気自体は気持ちの良い空気だ。
「寒さ」の質が日本とは全く違うもののような気がした。
あても無く、ポツリポツリとある民家に続く道を歩いていく。紅葉が本当に綺麗だ。
そう思いながら歩いていくと、どうやら川があるらしい…。ちょっと行ってみるか。
すると目の前に大きな川が・・・。なんという美しさだろう。
これだけを見に来ても良いくらいの美しさだ。散歩に出てきて良かった。本当に良かった。
しばらく目が離せなかった。刻々と陽は傾いていくが、その美しさも刻々と変化していく。
いつか北極圏を流れる川もカヤックで下ってみたいなぁ~と、トレッキングに行く前からついつい思ってしまった。
アラスカ…。余りにも広大でどこから足を踏み入れていったら良いのか本当に分からないくらいだ。
ただ分かるのは、「自分が本当にこの自然に惹かれている」という事だけだった。
さぁ、明日は念願のArrigetch Peaks(アリゲッチ・ピーク)への拠点、Circle Lake(サークル・レイク)に向けて出発だ。
確か、飛行機の格納庫にキッチンがあって、そこで料理しても良いらしいぞ。
飛行機を背にしながらの料理なんて生まれて初めてだ(笑)
うまいもん食って、早く寝るぞ~!
1日目
朝小屋で寝ている僕たちを突然マネージャーのJudyが起こしに来た。もう出発すると…。
もう大慌てだった。早く出るなら前日に言ってくれよぉって感じだった。
何とか大急ぎで荷物をまとめ、出発した。
これが僕たちがチャーターした水上飛行機だ。
陸路が全くないため、ここには水上飛行機で着水するしか方法が無い。
このサークル・レイクに来るまでも遊覧飛行状態だ。
このフライトが本来の目的では無いのに、こんなに素晴らしいなんて!
パイロットの真横に座り、踊る心を抑えきれない。
気持ちも言葉にならない。晴天に恵まれ、飛行機が木の葉のように舞う。
ジェット機は空気を切り裂いて飛んでいくが、小型セスナは風に乗って飛んでいるという感じだ。
非常に心地よい。パイロットのディックも気持ちよさそうに操縦している。
こんな所を飛べるパイロットが羨ましくもあった。
機体は予想以上に静かに着水し、荷物を荷室から取り出す。
いよいよ本当の旅が始まるのだ。
8日後の10時に迎えに来るから、必ず居るようにと念を押された。
夏のハイシーズンでもここには週に一組位しか来ないらしい。
完全に自分たちと自然だけの世界が待っているのだ。
限られている湖の幅を目一杯利用して、セスナが離水していく…。
不安と期待が心をよぎる。登山道も何もない。
ここは、"Gates of the Arctic National Park and Preserve(北極圏の扉国立公園)"に含まれていて、3,400平方キロメートルの広大な土地を有し、東西に960kmもの距離をブルックス山脈が走っているのだ。
その登録も1980年とまだ新しい国立公園だ。
まぁ、国立公園とは言ってもベテルスに小さなレンジャーステーションがあるだけ。
そこでクマ除けのフードコンテナーを借りられたり、簡単なオリエンテーションを受けたり出来る。
しかし基本的にはあくまでも自然を大切に扱うことは登山者に委ねられているのだ。
自由な分、各登山者の責任も重い。
それでも、この自然の中を存分に歩いて良いというのは本当にありがたいことだ。
さてさて、どうやって進もうか。
目の前にある山を直登していくか、大きく迂回して川沿いに上がるか決めかねていた。
というよりも、直登はきついよとレンジャーの人に言われてやや弱気になったのだ。
しかし、初期のプラン通り直登に決めた。
登り始めて分かったことは「キツイ!」。
背中の荷物も相当な重さだが、それより何より足下に広がるツンドラがやっかいなのだ。
谷地坊主みたいになっていて、乗るとグラグラするし、おまけに苔に足の力が吸収されて一歩一歩がしんどい。
選択を間違えたか・・・思わずこう思ってしまったが、この先こんな事は良く起こるだろうし、もう一方の方だってどんなものかは分かったもんではない。
気を取り直してがんばる。
ちょろちょろと流れる水場を見つけたので、濾過器で水を濾過しようとした矢先「あっっ!!!、壊れている!」。
念を入れて梱包はしたが、空港での運搬がよっぽど雑で強い衝撃が与えられたらしく、濾過をする陶器の部分にヒビが入っているというか割れているのだ。
外からでは全く気が付かなかった。もはや水は一度沸騰させてから飲むしかない。
これではガソリンの消費量が増えてしまう。かなりの誤算だ…。
とりあえず今沸騰させるのは面倒なのでリンゴで水分も取ることにする。
4,5時間かかってようやく緩やかな稜線に出た。しんどかったが、景色は最高だ。
「これだよ、コレ!」こんな風に思わずにはいられなかった。
それにしても人間とはナントちっぽけな存在なのだろうか?
この光景を見てつくづくそう思った。
そして、人間はなんでこんなに偉そうに地球を使っているのだろうか・・・。
まるっきり人が居ない場所に来て、「人」を知る。
こういう場所がまだ地球上に残っている事が嬉しい。
でも、この広大なツンドラ地帯にも石油開発の手は入っており、北極海からアラスカ湾まで石油を運ぶパイプラインが通っているのだ。
動物たちの季節移動には問題ないように作られている、というのがアメリカ政府の主張だ。
そんなことがあるはずがないのは、原住民の生活の変化を見てみれば直ぐに分かるし、彼らはそれ以前にこうなることが分かっていたのである。
当然といえば、当然か・・・。
テントを張り、まずは一息つく。風とガスが出てきた。
太陽が隠れると、とたんに寒くなる。たまに落ちてくるものも雪だ。風がとにかく冷たい。
歩いている時はまだいいが、ご飯を食べる時は手がもげそうになる。
クマがいるのでテント内でご飯を作れないのは前回同様だが、今回は薪で火を焚くことも出来ない。
いっそ雪が積もっていたら風を防げるのに。この冷たい風が吹く中、外で調理して外で食べなくてはいけないのだ。
初日はステーキだったが、とにかく寒くてそれどころではない。
それでも、せっせと焼いて頬張る。おいしい!でも、寒い(笑)
こんなに寒いとビールなんてもはや飲みたくない。でも、1リットルも持ってきてしまった…(笑)
重いので飲んでしまうべしっ。
ふとストーブに火をつけようとしてストーブに目をやると、なんとガソリンが漏れていることが発覚!
一体どこから…。良く見ると、ガスの調節つまみの付近に小さい亀裂があって、そこからガソリンが漏れているのだ。
急いでその下にトレーを置き、こぼれるガソリンを受け止める。
マズイ…。これでは旅が1日短くなっていたとしてもまだ8日間。
どうやっても燃料が持たないぞ…。不安で一杯になる。
[button-yellow url="https://pockets.jp/blog/2019/07/03/alaska-arrigetch-peaks-day2_3/" target="_self" position="center"]2日目も広大な大地に足を踏み出してみる[/button-yellow]