子供の頃に憧れたミヤマクワガタに逢いに

※本記事には広告リンクを含みます。憧れはいつでも無料です。
なぜいきなりミヤマクワガタなのか。
その理由を、少しだけ子供の頃までさかのぼってお話しします。
子供の頃、私は夏になると毎日のように夜明けと同時に森へ向かっていました。目的はもちろん、クワガタやカブトムシです。
樹液が出ている木を一本一本見て回り、まずは樹液に群がる虫がいないかを確認します。見当たらなければ、今度は渾身の力で木を蹴ります。
すると、高い場所にしがみついていたクワガタやカブトムシが、「ボトッ」と音を立てて落ちてくることがあるのです。
落ちた瞬間が勝負です。
落ち葉の下へ潜り込まれる前に、視覚と聴覚を総動員して落下地点を見極め、一気に駆け寄ります。そうして、ようやく念願のクワガタやカブトムシを手にすることができるのです。
これが本当に楽しいんですよね。
大きな個体を見つければもちろん大興奮ですし、反対に極端に小さな個体でも嬉しい。赤みの強い個体に出会えた日には、それだけで幸せな気持ちになりました😆
毎日のように森へ通っても、まったく飽きることはありませんでした。
そんな夏を何年も繰り返していた頃、岩手県から一組の家族がお隣へ引っ越してきました。同級生の男の子とはすぐに仲良くなり、毎日のように一緒に遊ぶようになります。
ある夏休み、帰省先の岩手から戻ってきた彼が手にしていたのは、一匹のミヤマクワガタでした。
何たる異形😲
これが、図鑑で見たあのミヤマクワガタか。
子供ながらに、大きな衝撃を受けたことを今でも鮮明に覚えています。
ノコギリクワガタともコクワガタとも違う、その独特な姿に一瞬で心を奪われました。
もちろん、羨ましくて羨ましくて仕方ありませんでした。
でも、私の実家の周りにはミヤマクワガタはいません。
どれだけ森へ通っても、どう頑張っても出会えない相手でした。
だからこそ、その憧れは夏が来るたびに思い出され、大人になってからも心のどこかに残り続けていました。
振り返ってみると、不思議なくらい私が暮らしてきた場所にはミヤマクワガタがいませんでした。
大学時代に住んでいた千葉なら、車で探しに行くこともできたのでしょう。でも、その頃は昆虫よりも他のことに夢中になる年頃でしたからね😆
そんなこんなで、ここ数年、ある思いが少しずつ大きくなってきました。
「自分の手でミヤマクワガタを捕まえてみたいという純粋な気持ちにフタをしたままで本当にいいのだろうか。」
そう思ったら、もう止まりませんでした。
今年こそ、子供の頃から憧れ続けたミヤマクワガタに会いに行こう。
そう決めたのです。
行くと決めたら、次はリサーチです。
まず気になったのは、「鹿児島にミヤマクワガタはいるのだろうか?」ということでした。
調べてみると、霧島周辺には生息していることが分かりました。標高を上げれば冷涼な環境が広がり、ミヤマクワガタに出会える可能性も高そうです。
さらに時期も重要でした。8月に入ると暑さの影響で出会えるチャンスは減ってしまうかもしれません。
そこで、ツアーの入っていなかった7月21日から23日までの二泊三日で行くことに決めました。
問題は、どこを拠点にするかです。
霧島と一口に言ってもエリアは広く、朝も夜も効率よく探すにはベースとなる宿選びが重要になります。
そこで選んだのが、えびの高原でした。
えびの高原ホテルを予約し、飛行機とレンタカーも手配。準備は万端です。
いよいよ、子供の頃から憧れていたミヤマクワガタに会いに行く旅が始まりました。

ヒグラシが迎えてくれた夏のえびの高原
7月21日。
屋久島空港を朝一番の便で出発し、30分ほどで鹿児島へ到着。レンタカーを借り、そのままえびの高原へ向かいました。
お昼前には、もうえびの高原に到着です。
「屋久島からこんなに近いんだ。」
まず、それに驚きました。
そして、もっと驚いたのが空気でした。
とにかく涼しい。
しかも、昼間からヒグラシが大合唱しているのです。
屋久島にはヒグラシはいませんし、本州でもヒグラシは夕方のイメージが強いですよね。
でも実際には、薄暗い林を好み、涼しい早朝にも盛んに鳴くセミです。朝から大合唱が響くえびの高原には、それだけヒグラシが暮らしやすい、涼しく豊かな森が広がっているのでしょう。
私はヒグラシの鳴き声が大好きなので、これは本当に嬉しいサプライズでした。
「毎年、この声を聞きに来てもいい。」
そう思ったくらいです。
冬に韓国岳から縦走した時にもえびの高原を訪れていますが、その時は一面の雪景色でした。
夏のえびの高原は、まるで別世界でした。
避暑地としての心地よさと、豊かな自然。
その魅力に、到着してすぐ心をつかまれてしまいました。
実は、この時点でかなり満足していました😆
でも、本来の目的を忘れるわけにはいきません。
さっそくミヤマクワガタ探し……といきたいところですが、情報が圧倒的に足りません。
まずは、えびのエコミュージアムセンターへ向かうことにしました。

展示を一通り見学したあと、スタッフの方にもミヤマクワガタについて尋ねてみましたが、残念ながら決定的な手がかりは得られませんでした。
そこで思い出したのが、ホテルからセンターへ向かう途中に見えた自然保護官事務所です。
「ここで聞いてみるしかない。」
そう思い、思い切って訪ねてみました。
最初は少し怪しまれましたが、捕獲そのものが目的ではないことや、国立公園のルールを理解していることをお話しすると、少しずつ打ち解けてくださいました。
地図を広げながら、気になる樹種がある場所を教えていただいたり、この地域の自然について教えていただいたり、とても有意義な時間になりました。
ただ、一つだけ少し気になる話もありました。
「メスは街灯でたまに見ますが、オスは滅多に見ませんね。」
「えっ、マジですか……。」
その返答に、少し不安になりました。
霧島周辺は、本土産のミヤマクワガタが生息する南限域の一つです。
それでも、探しに来た以上は歩くしかありません。
職員の方にお礼を伝え、まずは自分の目で森を見て回ることにしました。
最初の手がかり
まずはオーソドックスに、実際に歩いて探してみることにしました。
最初に選んだのは、「池めぐり自然探勝路」です。

※発行元:えびのエコミュージアムセンター
私の作戦はとてもシンプルでした。
ミズナラやブナが多い場所を探し、その中から樹液が出ている木を見つけること。
ブナやミズナラは、鹿児島県本土の山地が国内における分布の南限域となっています。温暖な鹿児島では、主に標高の高い冷涼な場所に残されている樹木です。
えびの高原もそんな条件を満たした貴重な場所というわけです。
屋久島で普段ガイドをしている私にとって、ミズナラやブナの森を歩くだけでも新鮮でした。
屋久島ではどちらも見ることができません。代わりに、クワガタやカブトムシがよく集まるのがタブノキです。私の感覚では、本州の雑木林におけるクヌギに近い存在です。
だからこそ今回は、「ミズナラを探す」というミッションになったのです。

往路では「良さそうな場所」を見つけ、復路で一本一本じっくり確認していくことにしました。
折り返し地点にほど近いところで、ひときわ多くの樹液を出しているミズナラがありました。
「これは期待できる。」
そう思える一本でした。
翌朝は夜明けと同時にホテルを出て、真っ先にこの木へ向かおう。
そんなことを考えるだけでワクワクしてきます。
私の頭の中では、もう蛾やカナブンに混じってミヤマクワガタが樹液に集まっている光景が出来上がっていました😆
そして、あの発酵した樹液の匂いまで、鼻の奥によみがえってくるようでした。クワガタやカブトムシを捕りにいく時に必ず森の中に漂っていたあの匂いが…。
このコースには、昔の人が植えたとされている大きな杉「六観音杉」もありました。岩霧島神社と呼ばれる岩を切り出して作られた祠や、豊受神社の近くにあるところからも確かに頷けます。

気が付けば夕方になっていました。
そういえば、まだホテルにチェックインすらしていません😅
急いでホテルへ向かい、受付でスタッフの方と話をしていると、思わぬ話を聞きました。
なんと、前日まで事務所にミヤマクワガタのオスが迷い込んでいたそうなのです。
ただ、その日の朝に自然へ返してあげたばかりとのこと。
「えぇ〜、あと1日早ければ……。」
思わずそんな言葉が出そうになりました😭
でも、それは裏を返せば、この場所に確かにミヤマクワガタがいるという証拠でもあります。
夜の街灯も、しっかり探そう。
そう心に決めました。
そして、その日の夜。
ホテルのフロント前の灯りに、一匹のクワガタが飛んできていました。
ミヤマクワガタのメスです。

オスではありません。
でも、自分の力で初めて見つけたミヤマクワガタでした。
それだけで十分すぎるほど嬉しく、しばらく手のひらに乗せて眺めていました。
メスでも、やっぱりアゴは立派です。
「これがミヤマクワガタなんだ。」
そんなことを思いながら、何度も角度を変えて観察しました。

最後にひっくり返して、脚の付け根がオレンジ色になっていることを確認。
「よし、間違いない。」
オスなら一目で分かるのですが、メスはまだ自信がありません😅
こうやって特徴を一つずつ確認するのも楽しい時間です。
ホテルの周りも歩いて探してみましたが、その夜に出会えたのは、この一匹だけでした。
翌朝は4時起きです。
期待を胸に、早めにベッドへ入りました。
夜明け前の森へ
2日目の朝。
目覚ましが鳴いたのは午前4時でした。
まだ外は真っ暗です😅
しかも、大失態。
ヘッドランプを忘れてきてしまいました。
頼れるのはスマホのライトだけです。
少し不安になりながら準備をしていると、窓の外がほんの少しずつ明るくなり始めました。
その時です。
窓の外から、ヒグラシの鳴き声が聞こえてきました。
朝からヒグラシの大合唱です。
「ここは天国なんでしょうか。」
そう思ってしまうくらい幸せな朝でした。
前日に下見をしてあるので、向かう場所は決まっています。
もう一直線です。
エコミュージアムセンター前の駐車場には、車中泊をしている車が何台も停まっていました。
でも、まだ誰も動き始めてはいません。
そんな静かな駐車場の隅を、一人だけ森へ入っていく。
なんだか少しだけ特別な時間を独り占めしているような気分でした。
森の中はまだ暗く、スマホのライトが欠かせません。
でも、耳に飛び込んでくるのはヒグラシの大合唱。
ここまで一斉に鳴いていると、子供の頃に聞いていたどこか哀愁を帯びたヒグラシの声とは少し印象が違います。
それでも、この朝の空気は最高でした。
歩いているうちに空が少しずつ明るくなり、目も暗さに慣れてきます。
ライトを消し、樹液のある木を確認する時だけ灯りをつけることにしました。
そういえば、モバイルバッテリーは持ってきたのに、充電ケーブルを忘れていました😅
本当に忘れ物が多い旅です(笑)
一本一本、慎重に見て回ります。
でも、ミヤマクワガタどころか、クワガタの姿そのものがありません。
それでも私には、昨日見つけた「あの一本」があります。
あの木には、きっといる。
そんな期待だけはまったく揺らぎませんでした。
近づくにつれて、樹液の甘い匂いが漂ってきます。
「間違いない。」
胸が高鳴ります。
木に近づいた瞬間、1匹の蛾が飛び立ちました。
急いで木の周りを一周します。
もう一周。
さらに、もう一周。
……
いませんでした。
一匹も。

これは、正直かなりショックでした。
私の中では、一番可能性が高い木だったからです。
でも、まだ2日目の朝。
旅は終わっていません。
帰り道にも、まだ見ていない木があります。
それに今日は、往路とは違う白紫池を回るルートで戻る予定です。
「まだ分からない。」
そう自分に言い聞かせながら歩き始めました。
白紫池側のルートは尾根沿いを歩くことが多く、ミヤマクワガタを探すという意味では少し条件が違っていました。
それでも、火山の岩がゴロゴロと転がる景色は新鮮で、このルートならではの面白さがあります。

こんな早朝に誰にも会わないだろうと思っていたら、一人だけトレイルランナーが下から駆け上がってきてビックリ😲
こんな時間から走る人もいるんですね。
霧島と言えばアカマツが有名ですが、この辺りにも美しいアカマツ林が広がっていました。
朝陽を浴びて、より木肌の赤さが際立っていました。

そして、もう一つ楽しみがありました。
ホテルの朝食です。
実は予約したプランでは朝食付きしか選べず、「どうせ時間がなくて食べられないだろう」と思っていました。
ところが歩いてみると、意外にも間に合いそうです。
途中からは、
「なんとか朝食に間に合わせたい!」
という気持ちに変わっていました(笑)
結局、8時にはホテルへ戻ることができました。
コーヒーを飲みながら、大きな窓の向こうに広がるえびの高原を眺めます。
硫黄山方面から立ち上る噴気をぼんやり見ながら、
「あぁ、いいところだなぁ。」
そんなことを思っていました。
それでも諦めきれなくて
朝食を食べ終えたあとは、部屋へ戻って少し休憩しました。
気持ちよく昼寝をしていたのですが、電話で起こされてしまいます😅
せっかく目が覚めたので、「えびの岳登山コース」も歩いてみることにしました。
時間帯的にミヤマクワガタと出会える可能性は低いと思っていましたが、有望な場所くらいは見つかるかもしれません。
歩き始めたのは午前10時過ぎ。
朝よりは気温も上がり、歩けば汗ばむくらいになっていました。
えびの高原キャンプ村を抜け、登山道へ向かいます。
キャンプ場の雰囲気につい見入ってしまい、登山口を通り過ぎるという小さなハプニングもありました😆
少し戻って歩き始めると、思っていた以上にミズナラが多く生えています。
ただ、「ここなら絶対にいそうだ」という雰囲気ではありませんでした。
それでも、一か所だけ気になる場所がありました。
「あの辺りは、ちょっと面白そうだな。」
そんな場所です。
夜明け前や夜に歩いてみたくなるような雰囲気はありましたが、道のない場所ですし、国立公園内でもあります。
今回は眺めるだけにしておきました。
結局、えびの岳を歩いたのは、この一度だけでした。
午後は霧島方面へ車を走らせました。
妻がおすすめしてくれたカフェがあり、一度行ってみたかったのです。
雰囲気はとても素敵でしたが、不思議と私には特別な印象までは残りませんでした。期待が大きすぎたのかもしれません。
とはいえ、実際に足を運んだからこそ分かったことです。こういう小さな発見も、旅の一コマなのでしょう。
ホテルへ戻る途中、お弁当を買って帰ろうと思っていました。
ところが、お店はすでに閉店。
向かいにあったレストランも閉まっています。
「和牛バーガーが食べたかったのに……。」
最後の望みだった売店へ入ると、カップラーメンだけは残っていました。
この日の夕食は、カップラーメン一つです😅
まぁ、ひと晩くらいこんな日があってもいいでしょう。
温泉に入り、夕食を済ませると、再び夜の探索へ向かいました。
今夜こそ。
そんな期待を胸に歩き回りましたが、残念ながらミヤマクワガタは姿を見せませんでした。
前日に出会えたメスさえ、現れません。
やっぱり毎日出会えるほど甘くはないんですね。
ちょっぴり肩を落としながら、ホテルへ戻りました。
40年越しの「ボトッ」
最終日の朝。
祈るような気持ちでホテルを出ました。
もう見るべき場所は決まっています。
あとは、そのポイントを一つひとつ確認していくだけです。
一本。
また一本。
さらに一本。
でも、今日も気配はありません。
ミヤマクワガタどころか、他のクワガタさえ姿を見せませんでした。
街灯の近くでクワガタの死骸の一部を見つけることはあっても、生きた個体には出会えません。
「本当に難しい場所なんだな。」
そんなことを思いながら歩いていました。
やっぱり最後まで期待してしまうのは、あの一本のミズナラです。
3日間で一番樹液が出ていた木。
「今日こそは。」
そんな思いで近づきました。

でも、やっぱりいませんでした。
樹液にはほかの昆虫が集まっていましたが、探しているクワガタの姿はありませんでした。
正直、かなり落ち込みました。
近くの神社へ立ち寄り、この3日間のお礼を伝えました。
結局、ミヤマクワガタには会えませんでした。
それでも、雨に降られることもなく、ヒグラシに囲まれながら森を歩けたこと。
それだけでも十分幸せな時間だったと思えました。
ホテルへ戻り、最後の朝食を食べ、チェックアウトを済ませます。
フロントへ向かうと、チェックインの時にミヤマクワガタの話をした女性スタッフの方がいました。
「実は昨日、またミヤマクワガタが飛んできたので捕まえておいたんです。」
そう言って、目の前にオスのミヤマクワガタを出してくれました。
これには本当に驚きました。
まさか、この手でミヤマクワガタのオスに触れられるとは思ってもいなかったからです。
お話を伺うと、前日に男性スタッフの方が捕まえた個体で、どうやら一度逃がしたミヤマクワガタが戻ってきたのではないか、とのことでした。
嬉しくて、外へ連れ出し、しばらく写真を撮らせてもらいました。

これがミヤマクワガタかぁ…。
おそらく10分近く、触ったり、眺めたり、写真を撮ったりしていたと思います。
ミヤマクワガタに出会えたことも嬉しかったのですが、それと同じくらい嬉しかったのが、私の話を覚えていてくださり、わざわざミヤマクワガタと出逢わせてくださったスタッフの皆さんの温かい心遣いでした。
「旅」というものは、こうした人との出会いによって、より豊かなものになるのだと改めて感じました。
丁寧にお礼を伝え、空港へ向かってレンタカーを走らせ始めました。
その時です。
道路脇に、ミズナラがまとまって生えている森が目に入りました。
「少しだけ歩いてみようかな。」
時間にはまだ余裕があります。
車を停め、森の中へ入っていきました。

道はありません。
ミズナラを一本ずつ見ながら歩いていきます。
思っていた以上に樹液が出ている木があります。
少し期待します。
でも、時間はもう午前11時近く。
ミヤマクワガタの活動も落ち着き、見つけにくくなる時間です。
「やっぱり難しいかな。」
そんな気持ちで一本一本見て回りました。
何もいません。
やれることは、もう全部やった。
そう思いました。
最後に一本だけ。
子供の頃と同じように、最後は木を蹴って確認です。
ボトッ。
その音が聞こえた瞬間でした。
間違えるはずがありません。
子供の頃、何度も聞いた音です。
一瞬で体が反応しました。
音のした方を見ると、
そこにはミヤマクワガタがいました。
しかも、
オスとメス。
二匹一緒です。
思わず駆け寄りました。
「いた。」
「本当にいた。」
ついに、この手でミヤマクワガタを捕まえることができたのです。

もう、本当に嬉しかった。
落ちて来てくれた二匹(いや、正確には私が落としたんですが😅)に、何度も「ありがとう」と言いました。
オスとメスが、まったく同じ場所へ重なるように落ちてきました。もしかすると、交尾中だったのかもしれません。
そうだとしたら、なんとも申し訳ないことをしてしまいました😅
メスはすぐに木の根元の土へ潜っていきます。
メスが土に潜った場所を覚えておいて、まずはオスを手に取りました。

いやぁ……。
これがミヤマクワガタですよ。
子供の頃から、ずっと憧れていたミヤマクワガタです。
何枚も写真を撮りました。
手に乗せて眺めました。
逃がしては、また手に乗せました😆
嬉しくて、嬉しくて仕方ありませんでした。
53歳になって、ようやく子供の頃の夢を一つ叶えることができました。
きっと、子供の頃から身近にミヤマクワガタがいた人には、この気持ちは分かりにくいかもしれません。
でも、私にとってミヤマクワガタは、それほど特別な存在だったのです。
名残惜しくて森を歩き始めると、
「まだ、この森にはいるんじゃないか。」
そんな気持ちがどんどん湧いてきました。
飛行機は変更できるチケットです。
少し考えて、
便を遅らせることにしました。
もう少しだけ、この森を歩いていたかったのです。
結局、1時間以上歩き回りました。
さすがに新しい出会いはありませんでしたが、不思議と心は満たされていました。
車へ戻り、もう一度写真を眺めます。
自然と笑ってしまいました。
40年以上憧れ続けたミヤマクワガタ。
その夢は、旅の終わりに突然叶いました。
しかも、本土産のミヤマクワガタが暮らす南限域で、自分の手でオスとメスのペアに出会えたこと。
そのことも、この旅を特別なものにしてくれました。
そして何より、最後にあのミズナラの森へ向かおうと思えたのは、ホテルのスタッフの方がミヤマクワガタを見せてくださったことが大きかったように思います。
実際にその姿を見て、触れて、「この森には本当にいるんだ」と心から信じられたからこそ、もう一度だけ森へ入ってみようと思えたのかもしれません。
思い返せば、一番心に残っているのは、ミヤマクワガタを見つけた瞬間だけではありません。
ヒグラシに包まれた朝。
静かな森を歩いた時間。
期待して、落ち込んで、それでも歩き続けた3日間。
そのすべてが、この旅でした。
また、えびの高原へ帰ってこよう。
そんなことを思いながら、空港へ向かいました。
