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屋久島の大雨|2026年9月、実際どれくらい降ったのか調べてみた

屋久島の大雨|2026年9月、実際どれくらい降ったのか調べてみた
2026年9月、屋久島に降り続いた雨の3日間。

2026年9月3日から、非常に弱いながらも屋久島に接近し、一度離れたあと再び戻ってくるような予報が出ていた台風24号(クロヴァン)が、屋久島にも大量の雨をもたらしました。

長らく連絡をとっていなかった友だちなどからも、多数の心配のメッセージをもらった程です。

海外のお客さんからも数件メッセージをもらいました。

ただ、私が住む屋久島南部にある平内という集落では、たくさん雨は降ったけどまぁ想定の範囲内だったし、これくらいの雨は屋久島ではよくあります。

とは言うものの、屋久島というのは東西南北、里や山でとてつもない差を生じる島ですので、自分の居る場所と他のエリアが同じとは限りません。この差は本当に大きいんです。

こんな風に思っていたので、ドンドン舞い込む心配のメッセージを見ながら、一体どんな報道がされているんだ!と不思議に思っていました。

確かに、9月5日の朝5時10分、屋久島町に「土砂災害の特別警報(警戒レベル5)」が発表されていました。実際のところを調べてみると、 11時30分にレベル4へ切り替わるまで、全国ニュースで「命を守る行動を」と繰り返されていたようです。

よく報道で、「もの凄い風と雨が吹き付けています!」みたいなレポーターの背景には、「う〜んそんな風には見えないけど…」みたいな場面を見たことがある人は少なくないはずです。

今回は、あまりにも島外と島内のリアクションが分かれたので、ちょっと事実を追ってみました。

事実を追った理由は、先程のギャップを知りたかったのに加えて、起きたことを記録として残しておけば、いつか比べる日が来たときの材料になるからです。

そういった観点から今回は記事を書いています。

私自身がこの記事を次に見返すは、きっとすごい状況になっている日なんだろうなぁ〜。

まずは、どこで観測された雨なのか

今回の雨を調べるにあたって使ったのは、気象庁の観測データです。

屋久島町内で降水量を継続的に観測している気象庁の観測地点は、「屋久島」と「尾之間」の2地点。

「屋久島」という名前だけでは場所が分かりにくいですが、屋久島観測所は島の北東部にある小瀬田、屋久島空港付近にあります。

もう一つの尾之間観測所は島の南部。

私が暮らす平内から7km前後と比較的近い場所です。

この2地点の記録を追っていきます。

そもそも「12時間降水量」って何?

データを見始めて、まず引っかかったのがこれでした。

気象庁の資料には、

「3時間降水量」
「6時間降水量」
「12時間降水量」
「24時間降水量」
「48時間降水量」
「72時間降水量」

といった数字が出てきます。

では、「12時間降水量414mm」とは、いつからいつまでの12時間なのでしょう。

これは0時から12時、12時から24時といった固定された時間帯ではありません。

連続する12時間の雨量を調べ、その中で最も多かった12時間を取り出したものです。

たとえば今回、尾之間で記録された最大12時間降水量は、

414.0mm(9月5日05:20まで)

でした。

つまり、9月5日05:20までの連続する12時間で414.0mmの雨が降ったということです。

同じように最大3時間、6時間、24時間、48時間、72時間降水量にも、それぞれ雨量が最大になった時間帯があります。

そして、それぞれの最大値は必ずしも同じ時刻から始まるわけではありません。

このことを頭に入れて数字を追っていくと、今回の雨の姿がかなり分かりやすくなります。

まず72時間雨量を見て驚いた

今回、屋久島と尾之間の両観測所で、最大72時間降水量が観測史上1位を更新しました。

尾之間は、

646.0mm(9月6日16:10まで)

屋久島は、

645.0mm(9月6日16:40まで)

でした。

ちなみに、大雨の最中に鹿児島県の河川砂防情報システムを確認した際には、屋久島町内の観測地点で「1000mm」を超える表示も目にしました。ただし、このシステムには「時間雨量」「連続雨量」「累計雨量」など気象庁の最大72時間降水量とは異なる指標があり、現時点では当時見た数値の観測地点や集計条件まで確認できていません。そのため、この記事では後から検証できる気象庁の観測値を基準にしています。

ほぼ同じです。

それまでの歴代1位は、

尾之間 620.5mm(2015年7月21日)
屋久島 641.0mm(2023年8月10日)

でした。

つまり今回、島の南部と北東部にある2つの観測地点で、ほぼ同時に72時間降水量の歴代記録が更新されたことになります。

冒頭に書いた私自身の感覚とは、ずいぶん違う数字が出てきました。

尾之間では、さらに多くの記録が更新されていた

特に記録更新が目立ったのが尾之間です。

今回の最大降水量は、

3時間 152.0mm
6時間 236.0mm
12時間 414.0mm
24時間 490.5mm
48時間 576.5mm
72時間 646.0mm

でした。

このうち、

12時間
24時間
48時間
72時間

の4つが観測史上1位。

3時間と6時間も、9月としての観測史上1位でした。

こうして並べると「やっぱりものすごい雨だったんだ」で終わりそうですが、もう少し数字を追ってみると、今回の雨の特徴が見えてきます。

2019年5月18日の豪雨と比べてみる

屋久島の近年の大雨で、比較対象としてまず思い浮かぶのが2019年5月18日の豪雨です。

あの日は、水の流れ出る経路が十二分にある屋久島でさえ、道路が冠水して車が動けなくなり、通行止めになりました。

そして、山の上では土砂崩れがいくつも発生して、登山者が下山できずに自衛隊のレスキューにまで発展した日でもあります。

このとき屋久島観測所では、

6時間 379.0mm
12時間 429.0mm
24時間 451.5mm
48時間 461.5mm
72時間 482.0mm

を記録しました。

対して今回2026年9月は、

6時間 221.5mm
12時間 356.0mm
24時間 429.5mm
48時間 536.5mm
72時間 645.0mm

です。

屋久島観測所の最大降水量を2019年5月と2026年9月で比較したグラフ。6時間・12時間では2019年が多く、48時間から2026年が逆転している
屋久島観測所。短い時間では2019年が上、長い時間では2026年が上回ります。

ちょっと面白くないですか?

6時間では2019年の方が圧倒的に多い。

12時間でも2019年が上です。

ところが24時間になると差が縮まり、48時間で逆転。

72時間では、

2019年 482.0mm
2026年 645.0mm

と、今回の方が163.0mmも多くなっています。

尾之間で比べると、もっと分かりやすかった

同じ比較を尾之間でもしてみます。

2019年5月は、

6時間 236.5mm
12時間 298.0mm
24時間 335.0mm
48時間 349.0mm
72時間 374.5mm

今回2026年9月は、

6時間 236.0mm
12時間 414.0mm
24時間 490.5mm
48時間 576.5mm
72時間 646.0mm

でした。

尾之間観測所の最大降水量を2019年5月と2026年9月で比較したグラフ。6時間はほぼ同じだが、12時間以降は2026年が大きく上回っている
尾之間観測所。6時間はほぼ同じなのに、そこから先で差が開いていきます。

ここで個人的に一番興味深いと思ったのが6時間雨量です。

2019年 236.5mm
2026年 236.0mm

その差、たった0.5mm。

最も雨が多かった連続6時間だけを取り出せば、ほとんど同じ量の雨が降っています。

ところが12時間になると、

298.0mm → 414.0mm

24時間では、

335.0mm → 490.5mm

72時間になると、

374.5mm → 646.0mm

まで差が広がりました。

同じような激しさで雨が降った6時間があったのに、その後の雨の続き方がまるで違ったということです。

2019年と2026年は「雨の降り方」が違った

ここまで数字を追うと、今回の雨の特徴が見えてきます。

2019年の屋久島観測所では、最大72時間降水量482.0mmのうち、

最大6時間で379.0mm。
最大12時間で429.0mm。

72時間雨量に対して、6時間雨量は約79%、12時間では約89%に達します。

つまり、大量の雨が数時間から半日という短い時間に集中していました。

一方、今回2026年は最大72時間645.0mmに対して、

最大6時間221.5mm。
最大12時間356.0mm。

72時間雨量に対して、それぞれ約34%、約55%です。

12時間が過ぎても雨は終わらず、その後も24時間、48時間、72時間と雨量が積み上がっていきました。

かなり単純化して表現するなら、

2019年は「短時間集中型」。

2026年9月は「長時間継続型」。

同じ「記録的な大雨」でも、中身はかなり違います。

1時間ごとの雨量を追うと、雨の場所も動いていた

次に、9月3日からの1時間ごとの雨量を追ってみました。

屋久島観測所と尾之間観測所の1時間ごとの降水量を2026年9月3日から7日まで並べたグラフ
強く降った時間帯が、2つの観測地点でずれているのが分かります。

9月4日の日降水量は、

屋久島 324.0mm
尾之間 317.5mm

でした。

この日は両地点とも300mmを超えています。

ただし、強く降った時間は同じではありません。

屋久島観測所では9月4日の夕方から夜にかけて雨が強まりました。

その後、9月5日未明から早朝にかけて尾之間で非常に強い雨が降っています。

そして9月5日の日降水量は、

屋久島 193.0mm
尾之間 249.0mm。

翌6日は、

屋久島 118.0mm
尾之間 64.5mm

でした。

単純に「北から南へ雨が移動した」とまでは言えません。

ただ、島の広い範囲で大雨が続く中、台風の接近に伴い最も強く降る場所と時間が変化していたことは観測値からも読み取れます。

では、なぜ平内では「いつもの大雨」に感じたのだろう?

ここで最初の疑問に戻ります。

尾之間ではこれだけの記録が更新されていた。

しかも尾之間は、先程も申し上げたように私が暮らす平内からそれほど離れていません。

それなのに、私は今回の雨を「たくさん降ったけど、屋久島ならこれくらいはある」と感じていました。

もちろん平内と尾之間は同じ場所ではありませんし、今回の気象庁データだけから平内で実際に何mm降ったのかは分かりません。

ただ、もう一つ考えられるのが今回の雨の「時間」です。

2019年のように短時間に猛烈な量が集中する雨と、何日もかけて大量の雨が積み重なる雨。

最終的な総雨量が同じだったとしても、人がその場で感じる「ものすごい雨」という感覚は同じではないのかもしれません。

今回、尾之間で最大6時間236.0mmという強い雨があったことは事実です。

一方で、記録を更新した最大の理由は、その後も雨が長く積み重なったことでした。

「記録的な大雨だった」という数字と、「そこまで異常には感じなかった」という私自身の感覚。

最初は矛盾しているように思えたこの2つは、雨の降り方まで見ていくと、必ずしも矛盾していないのかもしれません。

「何mm降った」だけでは見えてこない

今回調べてみて一番面白かったのは、最大雨量そのものよりも、その中身でした。

「72時間で646mm降った」

これだけを見れば、ものすごい雨だったことは分かります。

でも、それだけでは2019年の豪雨との違いは分かりません。

3時間、6時間、12時間、24時間、48時間、72時間。

時間を変えながら数字を追うと、

短時間に一気に降った雨なのか。

長時間にわたって積み重なった雨なのか。

同じ島でも、どの時間にどこで強く降ったのか。

少しずつ雨の姿が見えてきます。

そして今回、屋久島と尾之間の両観測地点で最大72時間降水量が観測史上1位を更新したことは事実です。

尾之間では12時間、24時間、48時間、72時間でも歴代1位を更新しました。

だから、今回が記録的な大雨だったことに間違いはありません。

一方で、私が暮らす平内では、それほど異常な雨だと感じなかった。

そのギャップもまた、今回屋久島で起きたことの一部なのだと思います。

里と山とのギャップ

ご存知の通り、屋久島は1,936mの宮之浦岳をはじめとした高い山々が海のうえにそびえ立っている島です。

ですから、里の天気と山の天気は常に異なります。

年間降水量で見ると、山間部は里の2倍以上。地域差はありますが、時には3倍近くになることもあると思います。

そんな山間部のデータも林野庁が集めてくれています。

主なところだけでも、

  • 白谷雲水峡 標高630m
  • 白谷林道220支線 650m
  • ヤクスギランド 1,000m
  • 淀川登山口 1,380m
  • 黒味岳 1,800m
  • 小杉谷 680m
  • 大川林道 1,020m
  • 湯泊林道 580m
  • 永田カンカケ岳 730m
  • 宮之浦林道 460m
  • 保全センター 5m

があります。

直近のデータはさすがに手元にありませんが、蓄積されたら見せてもらって、さらに踏み込んだ分析につなげられそうか確かめてみるつもりです。

この記録を未来の比較材料に

今回の数字を残そうと思ったもう一つの理由が、未来との比較です。

今後また屋久島で大雨が降ったとき、

「あの2026年9月と比べてどうだったんだろう?」

と思う日がきっと来ます。

そのとき、

72時間で何mmだった。

だけではなく、

どれくらいの時間に集中していたのか。
どの地域で強く降ったのか。
過去の豪雨とは何が違ったのか。

そこまで残しておけば、単なる記録以上の比較材料になります。

冒頭にも書いた通り、私自身がこの記事を再び読み返すのは、きっと屋久島でものすごい雨が降っているときでしょう。

できれば、この記事の記録がなかなか更新されないことを願いたいところです。

※雨量データは気象庁の観測値をもとに整理しています。「屋久島」「尾之間」はそれぞれ観測地点であり、ここで示した雨量が屋久島全域の降水量を表すものではありません。

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